Nutty cake




「イギリスへ行きたい」


精悍な目をした青年は、そう呟いた。




「何でスか」

もう一人の男は、先程ウエイトレスが持って来たシフォンケーキにフォークを刺しながら尋ねた。

「土葬されたい」

死んだら、と、短く、そう答えた。

青年の胸元で小さなクロスのペンダントが揺れた。

ミルクティ色の髪で少し茶色掛かった色の大きな目を持った青年。

身長もそう高くなく、向かい合って座るこの男2人の上下関係は傍からでは逆に見える。

ただ、其れはもう一人の男の身長が高すぎる事も手伝っていた。

「食事中になんちゅーコトを。」

等と返しながら、男は美味しそうにケーキを頬張る。

「けど、多分無理かな」

青年の実家は確か、大きな海に面した小さな町だと、男は聞いた覚えがあった。

「日本じゃね」

無理っスね、と返しながら、男はもう一切れケーキを口に入れた。

青年は苦笑しながら、自身も珈琲を一口飲んだ。

男は其れを見遣り、青年の口に広がるであろう苦味に少し顔を顰めた。

其の感じない苦味を誤魔化す様に、もう一切れ口に押し込む。


「・・緑に包まれるんだ」


珈琲を見つめた侭青年は呟いた。

其れは黒い液体に映ったもう一人の自分に向かって言った言葉の様だった。

何と無く置いてけぼりを食らう気配を感じ、少し焦って男は尋ねる。


「土に還るってコトっスか」


「そうして秋頃コスモスが咲くんだ」


珈琲を見つめた侭、それでも彼は頷き、そう呟いた。


「ロマンチックっスね」


最後の一切れを口に放り込み、男は言った。


「寂しい奴かな」


青年は勢いよく顔を上げ微笑んだ。

何とも下手な笑顔だった。


「俺は好きっスよ」


結構、と付け加えて、照れ隠しにもう冷たくなった紅茶に手を伸ばす。

青年も苦笑しながら珈琲をもう一口。





見遣った窓は綺麗な夕暮れを湛え。

讃え。





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