朝から頭が痛かった。
ガンガン響くのは昨日飲み過ぎた所為だって分かるけど、
目の前の、此れは、何?
桜散る窓辺の一枚の絵。
っていうか、誰?
「ぁ、目開いた。」
ベッドの上で目を覚ましていつものように身体の向きを変えると、
ベットの側で何か(誰か?)が俺を視ていた。
「・・・おはよ・・」
寝起きが悪い俺はその時何を思ったか唯朝の挨拶をしたのだった。
すると相手は驚いて、でもスグに目をキラキラと輝かせて。
「おはよう」
と、満面の笑みを浮かべた。
久しぶりに見た裏表の無いコドモの笑顔。
「っていうか、誰デスか?」
顔を洗ってから、やっと其の質問を出した俺。
「・・・?」
相手は何だか答えあぐねていた。
「あぁ、ごめん。じゃぁ、貴方のオナマエは?」
「えっと・・・?・・・」
また相手は答えないが、何だか先程と様子が違う。
「ナマエぐらい云えよ。」
少々呆れて呟けば、
「・・忘れた」
呆れるドコロではない返答が帰ってきた。
「忘れたって、何、キオクソーシツ?」
勘弁しろよ、と頭を抱えると、
「違うよ、記憶喪失なんかじゃない」
説明しろと相手に目を向けると、
「だって昨日酔って道に倒れてたアンタを僕が此処まで運んだし。」
「其れより前に記憶を失ってるなら其れは証拠には成らない」
あ・・、と相手は気付きの声をあげ、少し考える。
「名前を覚えてないのは長いこと使って無かったからってだけ。」
これでいいかな、と。真顔で。
「なに、それ」
こーゆーの心底困る。
「名前とかいらなかったから」
「・・・アンタ何者?」
多分俺の正しい質問。
初めからこう尋ねるべきだったのだ。
「天使でス。」
頭が痛い事実に何も変わりは無かったが。
「・・・頭が痛いのでもう少し寝マスイイデスカ?」
「どうぞ」
桜舞い散る春の日。
靡く白いカーテンを開き窓を開けたソイツ。
窓辺に座って桜吹雪に目を細め。
まるで天使のようだった。
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