公園横の図書館の日本人作家の『サ〜タ』の棚の向こうの窓から見える喫茶店。

こじんまりとしたシンプルな喫茶店。

ブラックとグリーンで統一されたデザインの喫茶店。




tea time




「や。」

そう云って軽くてを挙げれば、や。と同じように返された。

オープンカフェになっているこの店の奥の方のテーブルがいつもの席。

常連客か、静かに本でも読みたい様な人しか来ない店。

つい最近知り合いが女子高生を3,4人引き連れてきたけれど。

そんなワケで、俺のお気に入りのテーブルは結局の所俺の指定席なのだ。

「今日はギーくん居ねェの?」

レンガの壁を背にする様に椅子に腰掛け、同じ様に向かいに座るソイツに尋ねた。

ソイツ、とはこの喫茶店のマスターであるから、座っていて良い筈は無いのだが、

この店は前述の様に、そういう事が許される店だった。

「居るよ、奥に・・」

と、云い終わらぬうちにガタガタとカウンターの更に向こうのドアから音がした。

「あー、廊下ぐちゃぐちゃだろうなぁ・・」

と眉を顰めながらマスターはドアに向かっていった。

俺は椅子の向きを少し変え、やがて訪れる衝撃に構えたのだった。




「――ッワンっ!!」

太い声で一吠えして、ギーは俺に突進してきた。

案の定、腹に一撃を喰らい、少し背を丸めた。

そこで、マスターがギーを呼んだものだから、ギーはマスターの方へ振り返り、

鼻で勢い良く俺の顎にアッパーをかまして行った。

「相変わらず元気だなぁギーくん」

服を払いながら椅子から立ち上がると、ギーがトコトコとさっきより大人しく此方へやってきた。

基本的にギーは大人しい犬なのだ。

只お出迎えは派手にする主義らしいのだ。

よしよし、と頭を撫でてやると目を細めて頭を手に摺り寄せてくる。

そうして俺の周りを一周して、更に手の周辺でぐるりと一周する。

前身の黒い毛がギーがくるくると回る度に光を緩く動かす。

その内ギーは俺の脚に擦り寄るように座りこんだ。

「懐かれてんね」

マスターはいつの間にかコーヒーを淹れてくれた様でテーブルに置いて、そう云った。

俺はえへへとだらしなく笑い、ギー動いちゃうぞ〜、と足を後ろに下げた。

案の定ギーは少しつんのめり勢いで手に少し攻撃をしかけてきた。

俺は華麗にその甘噛みをかわしながらテーブルに戻った。

ついて来たギーがまた先程と同じ様に、でも今度は半周回って向きを変えただけで、座った。

頭を撫でてやると満足したのか足元に横になった。

俺は其れを合図に本を取り出して、読書を始める。



そんな土曜日の午後。


晴やかな空と涼しくなってきた風と、

足元で横になる友達と偶に俺の邪魔をする構って欲しがりな悪友と。



そんないつかの午後。





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